最判昭和39年5月23日 民法109条 白紙委任状と代理権授与表

最判昭和39年5月23日 民法109条 白紙委任状と代理権授与表示

白紙委任
A 転々流通予定型
 白紙委任状の正当な取得者は代理人として行為することが認められ、この者が委任次項について代理をすえば有権代理となる
 委任次項以外の事項を行った場合には無権代理となるが、非予定型の直接型と同様に検討できる

B 非予定型
 代理権を与えられている者が委任次項について代理をすれば有権代理である
1 直接型
 他の者が空白を濫用した場合で、直接的被交付者が空白部分を濫用する場合
 ・何らかの代理権をもっていることが多いので、その場合には110条で処理
 ・直接的被交付者が予定されていない相手方と取引したのであればその者に対して白紙委任状により109条の授権表示がされ  たかを検討

2 間接型
 転得者が空白部分を濫用する場合
 ・委任事項欄非濫用型 単に代理人の部分ないし相手方の部分の空白が濫用されたにすぎず、委任部分の濫用はあっても顕著で            ない場合には109条の適用を肯定する
 ・委任事項濫用型   代理人ないし相手方の部分の空白が濫用されたばかりではなく、委任事項の部分の空白も相当程度に濫            用された場合には、109条の適用を否定する
 

【判示事項】
不動産の処分に関する白紙委任状等の転得者がその書類を濫用した場合と民法109条の適用の有無

【判決要旨】
債務者甲が債権者乙との間に甲所有の不動産について抵当権設定契約を締結し、甲が乙に対し右抵当権設定登記手続のため白紙委任状等の書類を交付して右登記手続を委任した場合でも、とくになんびとが右書類を行使しても差し支えない趣旨でこれを交付したものでないかぎり、乙がさらに右書類を丙に交付し、丙が右書類を濫用して甲代理人名義で丁との間に右不動産について抵当権設定契約を締結したときは、甲は、民法第109条にいわゆる「第三者ニ対シ他人ニ代理権ヲ与ヘタル旨ヲ表示シタル者」にあたらない。


判旨
論旨は、以上の場合において、被上告人は民法一〇九条にいわゆる「第三者ニ対シテ他人ニ代理権ヲ与ヘタル旨ヲ表示シタル者」に当るという。

しかしながら、不動産所有者がその所有不動産の所有権移転、抵当権設定等の登記手続に必要な権利証、白紙委任状、印鑑証明書を特定人に交付した場合においても、右の者が右書類を利用し、自ら不動産所有者の代理人として任意の第三者とその不動産処分に関する契約を締結したときと異り、本件の場合のように、右登記書類の交付を受けた者がさらにこれを第三者に交付し、その第三者において右登記書類を利用し、不動産所有者の代理人として他の第三者と不動産処分に関する契約を締結したときに、必ずしも民法一〇九条の所論要件事実が具備するとはいえない。

けだし、不動産登記手続に要する前記の書類は、これを交付した者よりさらに第三者に交付され、転輾流通することを常態とするものではないから、不動産所有者は、前記の書類を直接交付を受けた者において濫用した場合や、とくに前記の書類を何人において行使しても差し支えない趣旨で交付した場合は格別、右書類中の委任状の受任者名義が白地であるからといつて当然にその者よりさらに交付を受けた第三者がこれを濫用した場合にまで民法一〇九条に該当するものとして、濫用者による契約の効果を甘受しなければならないものではないからである。