長崎地裁平成25年9月9日 元自炊代行業者の被告 有罪判決について

元自炊業者の被告に有罪判決が出たとのニュースが出ましたね。


□ 引用(著作権法32条

著作権法違反:「自炊」代行の被告に有罪判決 長崎地裁
http://mainichi.jp/select/news/20130910k0000m040024000c.html

被告は2012年9〜10月、自宅で漫画「銀魂」46冊を作者の許可なく複製してDVDに記録し、今年1月に自身のサイトを通じて1万円で販売。昨年12月と今年2月には、漫画「ワンピース」などの電子データを「キャンペーン」として不特定多数がダウンロードできる状態にした。

とのニュースが流れました。

 しかし、これだけをみると従来の「自炊」業者が「私的複製の例外にあたりえるか」の論点に関係なく違法となるべくしてなる事案だと思われます。
 つまりは、自炊業者であるか否か(自炊行為)はあんまり関係のない事件だと思われます(なので、元自炊業者であることを強調する必要があるのか、少しミスリーディングな感じがします。)

 というのは、思想又は感情を創作的に表現した絵画の著作物の著作者(著作権法2条1項1号、10条1項4号)は、21条から28条までに規定する権利(著作権)を専有し、権利制限規定による例外(30条以下)を経ない限り、法定利用行為に該当する行為(複製行為・公衆送信行為)を行うことは(正確にいうと、法定利用行為該当性、依拠性、類似性にそれぞれ該当する行為は、、違法となります。

 そして、自炊業者の論点とは、スキャナで書籍を読み取る行為は、書籍という著作物のハードディスクへの「複製」(著作権法2 条1 項15 号)に該当するため、著作権者に無断では行えないのが原則(複製権21条)ですが、私的使用目的でなされる複製は、例外的に複製権侵害とはならないとされている30 条1 項柱書の規定に該当しないかの問題です。

 しかし、本件では、電子データを不特定多数がダウンロードできる状態にしたということは、例外的に認められた私的な複製にはあたらず、他に権利制限規定もないので、公衆送信権(23 条1項)侵害となり、著作権侵害となります。

 したがって、インターネットでマンガを公開する行為自体は、利用許諾契約等がない限り、自炊業者が行おうが、個人が行おうが、当然、著作権侵害になります。

 なので、本判決の内容をみてはいないので正確にはわかりませんが、自炊業者の私的複製の手足なのかどうかについては判断されていないので、それほど重要なケースとはいえないかもしれませんね。

(複製権)
第21条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

公衆送信権等)
第23条  著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2  著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

(私的使用のための複製)
第30条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。


※ なお、確かに自炊業者は手足論を使い複製主体は顧客なので私的複製に該当しえるとの見解もありえますが、自炊業者は私的複製の30条1項柱書の著作物を「使用する者」自身の複製ではないため、適法となることは困難でしょう。やはり違法となるというのが通説的理解だとと思います。


※本記事は不確実な情報を基に作成されていますので、事実の誤認がありえるかと思います。申し訳ありませんが、予めご了承ください。