2020年東京オリンピックと知財法への影響についての早稲田医学知的財産法制度研究制度センターのコラム

早稲田大学知的財産法制度研究制度センターのコラムに
オリンピックと知的財産法制度についての非常に有益なコラムが掲載されていますので、紹介させていただきます。

法的根拠などにも明確に指摘されており、信頼性のある非常に役に立つ情報ですね。

http://www.rclip.jp/column.html

2020年東京オリンピック開催決定と知財法業界への新たな課題(*1)

 2013年9月8日(日)午前5時(日本時間)、アルゼンチンブエノスアイレスで開催されていた国際オリンピック委員会(”IOC”)総会において、2020年夏季オリンピックの開催地が東京に決定した。おそらく世界で一番大規模なスポーツイベントを間近に感じられる機会であると思うと同時に、我が国の知的財産法に係わる者にとって新たな検討課題を抱えることになるように思われる。

 というのも、オリンピック開催の立候補都市は、IOCの要求事項として開催候補都市とその国のオリンピック委員会(National Olympic Committee,“NOC”)は、オリンピック・シンボル(5つの輪のマークのこと)及び『Olympic』、『Olympiad』、オリンピック・モットーが、IOCの名前にて保護されていること、また、政府または権限ある国の機関から、IOCが満足できるレベルでかつIOCの名前にて十分で継続的な法的保護が現在得られており、これからも得られる」ことを保証しなければならないことによる。

 また、オリンピック開催都市に選定されたときには、IOCが用意した開催都市契約を、何の留保も修正もされることなく締結しなければならない。これらの文書はすべて、開催候補都市(開催地に選定された後は開催都市)及びNOCとの間のものなので、国との間の契約ではない。そのため、開催候補都市及びNOCに、国の誓約を事前に取り付けることを要求している

今後、我が国の法制度が、IOCの要求事項を満たしていないとIOCが判断した場合、オリンピック標章の商業的使用を禁止すること、特定の標章を使用していない場合でもオリンピックと関連があるかのような行為を禁止する内容を定める法の制定が求められることになる。

 そのとき、IOCの要請によるアンブッシュマーケティング規制法について、従来からの我が国の標識法の体系の中でどのように位置づけるのか、民間イベントであるオリンピックだけを特別に扱うのかなど、知財法業界に大きな課題が突きつけられることになるではないか。

 IOCの要請によるアンブッシュマーケティング規制について、例えば「おめでとう東京」で商標法・不正競争防止法違反となるのは困難ではないか、といった認識が知財を専門としている弁護士・弁理士・大学教授の中で
有る程度、共有されているのが現状であったのではないかと思います。

  日本国では商標法の範囲は限られた範囲でしか認められておらず、やはりIOCが他の国でも要請したいたアンブッシュマーケティング規制を行うレベルの規制はなされていないようです。
 
 しかし、ならば開催都市契約に基づき、東京都は国の法制度について事前の了承を得ておかなければならず、それがないと判断されるならば、国の立法的対応が採られることが要請されることとなるのではないかといった趣旨のコラムですね。



 開催都市契約というのは、IOCと開催都市間の契約で、国のレベルでの拘束力はやはり認められないでしょう。

 そして、開催都市契約が相手方が東京都であるならば、条例等で東京都が対応することも考えられますが、憲法94条には、「地方公共団体」は、「法律の範囲内」で「条例」を制定できるのであって、知的財産法制と異なる定めをおくことはできないでしょう。

 ならば、IOCと東京都が開催都市契約を結んだことにより、東京都が国レベルで立法的対応を要請していく義務が生じますが、一団体にすぎないIOCと一「地方公共団体」が締結したに契約に基づき、国自身は知的財産法制度を変更しなければならない義務は生じないので、国権の最高機関であある国会(憲法41条)が自主的な議論・対応を行っていくこととなるでしょう。


 おそらくは、今後整備は進んでいくのでしょうが、一民間団体と一地方公共団体が結んだ契約で、国の立法が作用されるのは変な感じですね。

 オリンピックは非常に大きなイベントであり、IOCは強力な団体ではあります。しかし、どこまでいっても、一民間団体にすぎません。
 では強大な事実上の影響力をもっているがために、一民間団体のために、国に一定の立法が要請され(この場合では、国民の表現の自由ないし経済的自由を制約する立法となります)、それに対応するという形が国の在り方として本当にいいのか、ちょっと違和感があります。