東日本大震災の地震発生後,高台にある幼稚園から眼下の海沿いの地域に向けて幼稚園送迎バスを出発させ,園児4名が津波に被災して死亡するに至った事案について,被告幼稚園長には情報収集義務違反の懈怠があり,被告幼稚園経営法人と共に損害賠償責任があると判断された事例(4)裁判所の法的判断 仙台高裁  平成25年09月17日

東日本大震災地震発生後,高台にある幼稚園から眼下の海沿いの地域に向けて幼稚園送迎バスを出発させ,園児4名が津波に被災して死亡するに至った事案について,被告幼稚園長には情報収集義務違反の懈怠があり,被告幼稚園経営法人と共に損害賠償責任があると判断された事例 仙台高裁  平成25年09月17日

6 判断
(1) 園児の保護義務について

被告B1学院が,原告らとの間の在園契約から生じる付随義務として,本件被災園児ら4名が本件幼稚園Cにおいて過ごす間,本件被災園児ら4名の生命・身体を保護する義務を負っていたこと,被告B2園長も,一般不法行為法上,同様の義務を負っていたことは,いずれも当事者間に争いがない。


そして,特に幼稚園児は3歳から6歳と幼く,自然災害発生時において危険を予見する能力及び危険を回避する能力が未発達の状態にあり,園長及び教諭らを信頼してその指導に従うほかには自らの生命身体を守る手だてがないのであるから,被告B1学院の履行補助者である本件幼稚園Cの園長及び教諭ら職員としては,園児らの上記信頼に応えて,できる限り園児の安全に係る自然災害等の情報を収集し,自然災害発生の危険性を具体的に予見し,その予見に基づいて被害の発生を未然に防止し,危険を回避する最善の措置
を執り,在園中又は送迎中の園児を保護すべき注意義務を負うものというべきである。

(2) 情報収集義務の懈怠について

ア そうであるところ,前記1ないし3認定の事実関係によれば,宮城県沖は海の太平洋プレートが陸のユーラシアプレートに沈み込む日本海溝の西側に位置しているため,ほぼ一定期間毎に海溝型の巨大地震が繰り返し発生しており,特に西暦869年の貞観地震津波は,仙台石巻平野の当時の海岸線より2〜4㎞も遡上し(本件小さいバスの2便目の送迎ルートである門脇町・南浜町地区は貞観地震当時には海底であった。),明治以降も明治29年の三陸地震の大津波(推定津波痕跡高約38.2m),昭和8年の三陸地震津波雄勝町荒の津波高さ10m),昭和35年のチリ地震津波牡鹿町大谷川の津波高さ5.65m)が発生していた。


また,石巻市以外においても平成5年には北海道南西沖地震津波(最大の津波痕跡高約30m)が発生し,海外においても平成16年のスマトラ島沖地震が発生し,いずれも多数の死傷者を伴う悲惨な結果が発生し,これらの過去の津波被害は新聞やテレビ等により折に触れて,繰り返し報道され続けていた。


そして,前記4認定の事実によれば,関係省庁は,平成5年には日本海中部地震及び北海道南西沖地震の経験に鑑み,津波に対する防災体制の点検,防災意識の向上等を図り,津波に対する警戒を全国的に強化するため,「津波警報関係省庁連絡会議」を設置し,平成11年には更に「津波対策関係省庁連絡会議」を設置して申合せを作成し,関係機関に対し,津波予報を住民に周知徹底するために市町村防災行政無線等の整備を図り,住民に対しては,①海浜にでかけるときは,ラジオ等を携行し,津波警報,避難勧告・指示等の情報を聴取するよう指導すること,②強い地震(震度4程度以上)を感じたとき又は弱い地震であっても長い時間ゆっくりとした揺れを感じたときは,海浜にある者,海岸付近の住民等に直ちに海浜から退避し,急いで安全な場所に避難するよう勧告・指示することを徹底するよう求めていた。それを受けた平成16年6月の宮城県防災会議の「宮城県地域防災計画[震災対策編]」(甲101)は,それらの津波予報の周知徹底方策を具体的に取りまとめ,更にそれを受けた石巻市も,定期的に地震防災訓練を行うとともに,本件地震直前の平成23年3月1日発行の市報においては,「災害は忘れたころにやってくる!」と題して,津波の特徴を伝え,津波から逃れるためには,強い地震(震度4程度以上)を感じたとき又は弱い地震であっても長い時間ゆっくりとした揺れを感じたときは,直ちに海浜から離れ,急いで安全な場所に避難することが大切であると指摘し,ラジオで津波に関する情報を取得することの大切さを呼び掛けるなどしていた。そして,新聞テレビ等においても,過去の地震や将来の地震発生のおそれなどを紹介し,大地震の発生後には津波に備えて高台に避難し,ラジオ等により情報収集をすることが大切であることなどを繰り返し伝えていた。



また,前記5(4)認定の事実によれば,宮城県教育委員会震災マニュアルにおいても,「指定職員はラジオなどにより情報収集に努める。津波警報等の発令時(見込みを含む。)は,更に高台等に二次避難する。」と定められており,学校保健安全法29条1項により作成が義務づけられている危険等発生時対処要領として作成された本件幼稚園C地震マニュアルにおいては,「地震の震度が高く,災害が発生する恐れがある時は,全員を北側園庭に誘導し,動揺しないように声掛けして,落ち着かせて園児を見守る。園児は保護者のお迎えを待って引き渡すようにする。」と定め,大地震発生の際には高台にある本件幼稚園Cにおいて園児を保護者に引き渡すことを定めていた。

そのような状況において,本件3月9日地震に続いて,11日に本件地震が起こり,約3分間にわたって最大震度6弱地震が続くという巨大地震を被告B2園長ら職員が体感していたというのである。


そうすると,眼下に海が間近に見える高台に位置する本件幼稚園Cに勤める被告B2園長としては,午後3時2分過ぎ頃に本件小さいバスを高台から出発させるに当たり,たとえ本件地震発生時までにはいわゆる千年に一度の巨大地震の発生を予想し得なかったとしても,約3分間にわたって続いた最大震度6弱の巨大地震を実際に体感したのであるから,本件小さいバスを海沿いの低地帯に向けて発車させて走行させれば,その途中で津波により被災する危険性があることを考慮し,ラジオ放送(ラジカセと予備の乾電池は職員室にあった。)によりどこが震源地であって,津波警報が発令されているかどうかなどの情報を積極的に収集し,サイレン音の後に繰り返される防災行政無線の放送内容にもよく耳を傾けてその内容を正確に把握すべき注意義務があったというべきである。



そうであるのに,被告B2園長は,巨大地震の発生を体感した後にも津波の発生を心配せず,ラジオや防災行政無線により津波警報等の情報を積極的に収集しようともせず,保護者らに対する日頃の送迎ルートの説明に反して,本来は海側ルートへ行くはずのない本件小さいバスの3便目の陸側ルートを送迎される本件被災園児ら5名を2便目の海側ルートを送迎する同バスに同乗させ,海岸堤防から約200ないし600mの範囲内付近に広がる標高0ないし3m程度の低地帯である門脇町・南浜町地区に向けて同バスを高台から発車させるよう指示したというのであるから,被告B2園長には情報収集義務の懈怠があったというべきである。

イ そして,前記5(9)に認定した事実によれば,本件幼稚園Cのすぐ近くにある本件防災無線からは,地震発生後の午後2時48分以降,「大地震発生,大地震発生。津波の恐れがありますので,沿岸や河口付近から離れて下さい。」と放送され,午後2時52ないし54分にされた放送以降においては,大津波警報発令の伝達に切り替えられ(甲68),「大津波警報大津波警報宮城県沖に大津波警報が発表されました。沿岸・河口付近から離れて
下さい。至急高台へ避難してください。」,「車での避難は控えて下さい。渋滞になります(なっています)。」等のアナウンスが繰り返されていた(甲9)。



また,前記5(10)に認定した事実によれば,NHK仙台放送局は,午後2時51分頃から午後3時8分頃までの間に,宮城県岩手県福島県沿岸に大津波警報が発表されたことを9回,宮城県への津波到達予想時刻が午後3時であり,予想される津波の高さが6mであることを12回にわたってラジオ放送で伝え,その際同時に,海岸や川の河口付近には絶対に近づかないこと,早く安全な高い所に避難することを合計14回にわたって呼び掛けていた。また,石巻コミュニティー放送によるラジオ放送も,午後2時50分頃からは大津波警報発令を伝え,午後3時1分には6mの津波(到達予想時刻午後3時)が宮城県沿岸部に到達するとの発表を伝え,午後3時10分まで,地震の規模がM7.9であり,宮城県北部の震度が7であり,大津波警報発令中であることなどを繰り返し伝えていた。



そうすると,仮に被告B2園長において前記アの情報収集義務を果たしていれば,大津波警報が発令され,午後3時前後には予想される宮城県津波の高さが6m以上と報道されていたことを知ることができ,このような状況下において高台から眼下に広がる海側の低地帯に向けて本件小さいバスを発車させることはなく(被告B2園長供述54頁),本件幼稚園C地震マニュアルに従って高台にある本件幼稚園Cに園児らを待機させ続け,迎えに来た保護者に対して園児らを引き渡すことになったものと推認され,本件被災園児ら5名の尊い命が失われることもなかったであろうといえるから,被告B2園長の上記情報収集義務の懈怠と本件被災園児ら5名の死亡の結果発生との間には相当因果関係がある。


(3) 被告らの主張に対する判断ア これに対し,被告らは,地震学者もマグニチュード9.0という巨大な本件地震の発生を予想していなかったから,被告B2園長に注意義務を課
す前提となる予見可能性がない旨主張する。

しかし,被告らの上記主張を採用することはできない。すなわち,予見義務の対象は本件地震の発生ではなく,前記説示のとおり巨大な本件地震を現実に体感した後の津波被災のおそれであり,情報収集により防災行政無線やラジオ放送等により津波警報大津波警報が伝達され,高台への避難等が呼び掛けられていた状況の下で,本件小さいバスを眼下に海が間近に見える高台から海岸近くの低地に向けて出発させることにより津波被害に遭うおそれがあるかについての予見可能性があったかどうかということであるから,単に本件地震発生前に地震学者がマグニチュード9.0の巨大地震の発生を予想していなかったことをもって,本件地震発生後の津波被災のおそれまで予見困難であったとはいえない。


イ また,被告らは,石巻市が過去の津波被害を踏まえて作成した別紙「津波ハザードマップ」(乙3)においても,浸水域としては海沿いの地域しか想定しておらず,石巻市の市街地を約7mもの本件津波が襲うことを予見していなかったから,合理的平均人である被告B2園長には何らの注意義務違反もない旨主張する。


しかし,被告らの上記主張を採用することはできない。

すなわち,前記認定のとおり,別紙「津波ハザードマップ」を紹介する石巻市のホームページにおいては,宮城県沖地震(連動型)に伴い津波が発生した場合の市内の予想浸水区域及び各地域の避難場所を示したものであって,浸水の着色のない地域においても,状況によっては浸水するおそれがあるので,注意してほしいこと,津波に対してはできるだけ早く安全な高台に避難することが大切であること,強い揺れを感じたら,すぐにテレビやラジオなどで津波情報や警報を確認し,市からの避難勧告や避難指示が出された時には,直ちに避難してほしいことが注記されていたというのである。



そして,本件小さいバスを出発させるに当たっての情報収集義務の前提となる予見可能性の対象は,門脇小学校や本件被災現場が津波に襲われることの予見可能性ではなく,本件小さいバスの2便目の走行ルートが津波に襲われることの予見可能性で足りるというべきところ,前記認定のとおり,同走行ルートは,高台にある本件幼稚園Cの眼下に見える海岸堤防から約200ないし600mの範囲内付近に広がる標高0ないし3m程度の低地帯である門脇町・南浜町地区内にあって,浸水が予想された海沿いの区域との標高差がほとんどない上,防災行政無線やラジオ等を通じて大津波警報と高台避難が呼び掛けられ,宮城県への津波到達予想時刻が午後3時であり,予想される津波の高さが6mであることが報道されていたというのであるから,津波被害を回避するために高台に位置する本件幼稚園Cにとどまる契機となる程度の津波の危険性を予見することができたというべきである。



したがって,単に石巻市ハザードマップの浸水予想区域が海沿いの区域のみであって門脇小学校や本件被災現場が含まれていなかったことをもって情報収集義務違反の前提となる津波被災の予見可能性がなかったとする被告らの上記主張は採用の限りでない。


ウ さらに,被告らは,「被告B2園長に情報収集義務違反があったとしても,

(ア)本件幼稚園Cの周囲の民家には本件地震による被害がほとんどなかったこと,

(イ)2日前の本件3月9日地震においても津波被害がなかったこと,

(ウ)停電のためテレビによる情報収集ができず,本件地震後の混乱や,園児,保護者への対応に忙しくてラジオ等による情報収集が困難であったこと,

(エ)防災行政無線やラジオ放送によっても石巻市に巨大な津波が襲ってくるという具体的な情報がなかったことに照らせば,指定避難場所とされていた門脇小学校や本件被災現場付近にまで津波が押し寄せてくることを予見することは困難であって,被告B1学院の責めに帰すべき事由又は被告らの過失を認めることができないから,被告らが債務不履行責任若しくは使用者責任又は不法行為責任を負うことはない。」旨主張する。



しかし,被告らの上記主張を採用することはできない。

すなわち,(ア)本件幼稚園Cの周囲の民家には本件地震による被害がほとんどなかったとしても,最大震度6弱の揺れが約3分間も続いていたから,地震震源地等によっては巨大な津波に襲われるかもしれないことは容易に予想されることであって,震源地の位置や地震の規模,津波警報の有無や内容を把握するために,ラジオや防災行政無線の放送内容を正確に聴取する必要があったというべきであるから,周囲の民家について地震による被害が見られなかったからといって情報収集義務違反について帰責事由がないとか過失がないということはできない。

また,(イ)2日前の本件3月9日地震は,マグニチュード7.3,石巻市門脇での震度が4であったのに対し(甲14の1),本件地震は,マグニチュード9.0(甲15),石巻市門脇での震度が6弱であって(甲16),本震の揺れが約3分近くも続いたという著しい相違があるのであるから,2日前の本件3月9日地震において津波被害がなかったことをもって本件地震後の大津波を予想することができなかったとはいえない。


さらに,(ウ)保護者や園児の対応のため忙しかったとしても,被告B2園長のほか,複数の教諭がいたのであるから,地震の揺れが収まった直後には直ちに被告B2園長において園児らの安全に係る情報の早期収集に努めるべきであって,保護者や園児の対応の必要性はその情報収集義務を免除し,又はその義務違反の有責性を否定する理由にはならない。



加えて,(エ)防災行政無線やラジオ放送によっても石巻市に巨大な津波が襲ってくるという具体的な情報がなかったとの点については,前記認定のとおり午後3時過ぎには宮城県に6mの津波が予想されると報道されていたのであるから,宮城県内の沿岸部に当たる石巻市にも6m前後の津波が押し寄せるかもしれないことは容易に予想されたことであって被告らの上記に係る主張は採用の限りでない。



なお,被告B2園長においては,本件地震後に園庭に避難していた園児らがみぞれの降っている中を寒そうにしていたから早く保護者らの元に送り届けたかったために本件小さいバスを出発させた旨供述する。



しかし,園児らをバスの中に避難させることもできるし,預かり保育の園児らと同様に園舎の中において保護することも可能であったから,みぞれ混じりの寒い天候であったことは,被告B2園長が情報収集義務を懈怠して本件小さいバスを出発させるという誤った判断をしたことを正当化する理由にはならない。



以上によれば,「被告B1学院の責めに帰すべき事由又は被告らの過失を認めることができないから,被告らが債務不履行責任若しくは使用者責任又は不法行為責任を負うことはない。」旨の被告らの前記主張は理由がない。

(4) 責任原因に係るまとめ


そうすると,被告B1学院の履行補助者(被用者)である被告B2園長が本件地震発生後に津波に関する情報収集義務の履行を怠った結果,本件小さいバスを眼下に海が間近に見える高台にある本件幼稚園Cから海側の低地帯に出発させて本件被災園児ら4名の津波被災を招いたといえるから,原告ら主張のその余の責任原因について判断するまでもなく,被告B1学院には安全配慮義務違反の債務不履行責任及び民法715条1項(使用者責任規定)の不法行為による損害賠償責任があり,被告B2園長には民法709条の不法行為による損害賠償責任がある。


(5) 原告らの損害

証拠(原告亡G母を除く原告ら本人7名の各供述)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは次のとおりの損害を被ったことを認めることができる。


ア 本件被災園児ら4名の逸失利益

(ア) 亡D,亡E及び亡F(当時各6歳)について

466万7200円(賃金センサス平成22年男女計学歴計全年齢平均賃金)×10.1170(死亡時6歳,就労可能年数49年のライプニッツ係数)×(1−0.45〔生活費控除割合〕)=2596万9934円


(イ) 亡G(当時5歳)について


466万7200円(賃金センサス平成22年男女計学歴計全年齢平均賃金)×9.6352(死亡時5歳,就労可能年数49年のライプニッツ係数)×(1−0.45〔生活費控除割合〕)=2473万3172円


イ 本件被災園児ら4名の慰謝料


本件の津波被災はマグニチュード9の巨大地震の発生という希有な自然現象が発端となっていることを考慮すると,5歳又は6歳と幼くしてその命を失った本件被災園児ら4名の死亡慰謝料の金額としては,各1600万円が相当である。


ウ 原告らは,各々自らの子の上記逸失利益及び慰謝料の損害賠償請求権を2分の1の割合で相続した(甲1ないし4)。


(ア) 原告亡D両親,同亡E両親及び同亡F両親

4196万9934円×2分の1=2098万4967円

(イ) 原告亡G両親

4073万3172円×2分の1=2036万6586円

エ 原告ら固有の慰謝料 各200万円

原告らは,5歳又は6歳という可愛い盛りの我が子を突然に失ったものであって,その著しい精神的苦痛を慰謝するためには1人当たり200万円の慰謝料が相当である。


オ 原告らが負担した葬儀費用 各75万円

葬儀費用としては本件被災園児ら4名について1人当たり150万円が相当であり,原告らは,その2分の1(75万円)ずつを負担したものと認められる。


カ 原告らの損害額の小計


(ア) 原告亡D両親,同亡E両親及び同亡F両親

2098万4967円+200万円+75万円=2373万4967円

(イ) 原告亡G両親
2036万6586円+200万円+75万円=2311万6586円

キ 損益相殺

被告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,原告らは被告B1学院から200万円(原告1人当たり100万円)の弔慰金を受領し,独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害給付制度に加入していた被告B1学院から,給付金500万円(原告1人当たり250万円)を受領したことを認めることができるから,これを原告らの損害額から控除する。


(ア) 原告亡D両親,同亡E両親及び同亡F両親

2373万4967円−100万円−250万円=2023万4967円


(イ) 原告亡G両親

2311万6586円−100万円−250万円=1961万6586円

ク 原告らが負担した弁護士費用 各200万円

弁護士費用としては,原告1人当たり200万円が相当である。


ケ 損害額のまとめ

(ア) 原告亡D両親,同亡E両親及び同亡F両親

各2223万4967円

(イ) 原告亡G両親

各2161万6586円

よって,民法415条の債務不履行による損害賠償請求権,又は民法715条1項若しくは709条の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,原告亡D両親,同亡E両親及び同亡F両親各自においてはそれぞれ損害金2223万4967円,原告亡G両親各自においてはそれぞれ損害金2161万6586円及びこれらに対する平成23年8月26日(不法行為の後の日又は本件訴状送達による催告の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の連帯支払請求権を有する。


第4 結論

以上によれば,原告らの被告らに対する各請求は,いずれも,上記支払請求の限度で理由があるからその限度で認容することとし,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。なお,仮執行免脱宣言は相当ではない。


仙台地方裁判所第1民事部
裁判長裁判官 齊 木 教 朗
裁判官 荒 谷 謙 介
裁判官 遠 藤 安 希 歩