最判昭和33年10月24日 発起人の開業準備行為

最判昭和33年10月24日 発起人の開業準備行為

事件番号
 昭和32(オ)483
事件名
 報酬金請求
裁判年月日
 昭和33年10月24日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第12巻14号3228頁
原審裁判所名
東京高等裁判所
原審事件番号

原審裁判年月日
昭和32年03月20日
判示事項
 設立登記未了の会社の代表取締役として契約を締結した者の責任。
裁判要旨
 株式会社の設立を計画発起した者が、未だ設立登記をしないうちに、右会社の代表取締役として、第三者との間に、会社設立に関する行為に属しない契約を締結した場合、その者は、右第三者に対し、民法第一一七条の類推適用によつて責に任ずべきである。
参照法条
民法117条,商法57条


判旨
         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人竹沢哲夫の上告理由について。

 原審の確定した事実によれば、要するに、上告人らは、かねてA整練株式会社の設立を計画発起し、昭和三〇年九月一二日に至りその設立登記を了したものであるが、上告人は、昭和三〇年三月、未だその設立手続未了で設立の登記をしていない右会社の代表取締役として、被上告人との間に本件契約を締結したというのである。


而して、原審判示の本件契約は、会社の設立に関する行為といえないから、その効果は、設立後の会社に当然帰属すべきいわれはなく、結局、右契約は上告人が無権代理人としてなした行為に類似するものというべきである。尤も、民法一一七条は、元来は実在する他人の代理人として契約した場合の規定であつて、本件の如く未だ存在しない会社の代表者として契約した上告人は、本来の無権代理人には当らないけれども、同条はもつぱら、代理人であると信じてこれと契約した相手方を保護する趣旨に出たものであるから、これと類似の関係にある本件契約についても、同条の類推適用により、前記会社の代表者として契約した上告人がその責に任ずべきものと解するを相当とする。それ故、右と同趣旨に出た原判決は正当であつて、論旨は理由がない。

 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一