創立総会における変態設立事項の追加的変更の可否

最判昭和41年12月23日

【判決日付】 昭和41年12月23日
【判示事項】 創立総会による変態設立事項の変更
【判決要旨】 創立総会において決議することができるいわゆる変態設立事項の変更は、その縮小または削除に限られ、あらたに変態設立事項に関する定めを追加し、または既存の規定を拡張することは許されない。

判旨
商法上、現物出資、財産引受のようないわゆる変態設立事項は、原始定款の相対的記載事項とされ、その記載がなければ効力を生ぜず(一六八条一項)、設立経過中において特に裁判所の選任する検査役の調査を受けるべきことが要求され(一七三条、一八一条)、発起設立の場合には裁判所、募集設立の場合には創立総会において、その事項を不当と認めたときは変更することができ(一七三条二項、一八五条一項)、また、募集設立の場合には株式申込証にその事項を記載し株式を引受けようとする者にその内容を知らせることが必要とされている(一七五条二項)。かような厳重な法の規制は、これらの事項が、発起人の濫用の対象となり、発起人その他の第三者の利益のために会社の財産的基礎が害される危険が多いため、会社資本の充実を期して会社債権者を保護し、併せて他の株主の利益が害されることを防止する目的に出たものであることは明らかである。されば、右一八五条一項による創立総会の変更権は、原始定款記載の変態設立事項が不当と認められる場合に、これを監督是正する立場から、がような事項を縮小または削除するためにのみ行使されるべきものであつて、創立総会で新たに変態設立事項に関する定めを追加し、あるいは既存の規定を拡張することは許されないものというべく、一八七条の規定する創立総会の定款変更権は、変態設立事項については及ばないと解するのが相当である。


創立総会において変態設立事項を追加されることはできるか。

この点、平成17年改正前商法での判例では、創立総会における変更は既存の事項の縮小又は削除に限るとされていた。

これは、原始定款や株式申込証の養子に記載された変態設立事項の存在・内容を前提として株式を引き受けた者は、変態設立事項が追加されても発起人とは異なり引受けを取り消すことができないため、不足の損害を被るおそれがあること及び、変態設立事項は原則として検査役による調査が要求されており、創立総会はその調査結果を前提に決議するので、追加部分には調査が及ばないと株主や会社債権者の利益を害するためである。

しかし、現行の会社法の下では、不当ち認めたときは創立総会は、変態設立事項を変更できるにとどまらず、創立総会は定款を変更することができる(会社法96条)。また、変態設立事項に係る定款変更に反対した設立時株主には、設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる(97条)。さらに、創立総会で変態設立事項を追加しても、33条は30条1項のように『第26条1項の定款』という文言を用いず、『定款に第28条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるとき』と規定していることあkら、創立総会による変更による定款に28条各号に掲げる随行の記載が生じたときも提供されるので、不当に廉価な元物出資が行われて設立時株主間の公平が害される事態は生じない。

したがって、現行法では、現行では創立総会における変態設立事項の追加的変更は許されていると解される。