他人の権利の処分と追認 昭和37年8月10日

116条 無権代理行為の追認

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

根拠 私的自治的決定の尊重

追認の効力
原則 無権代理人は契約の時にさかのぼって適法な代理行為があったと同様の効果を生じる。

例外
別段の意思表示によって、遡求効を制限し、追認の時から有効な代理行為とすることができる

追認によって第三者の権利を害することはできない(ただし書)

類推適用

1 身分行為
無効な代諾養子縁組の追認
内縁の妻が夫に無断で婚姻届を出した後、夫が黙示の追認をした場合

否定例 養子縁組の追認

2 他人物売買
他人の物を自分の物として処分した場合にも、権利者が追認すれば、本条が類推適用される。もっとも、権利者による追認がなされても、売買契約の当事者は他人物売主と買主である。


【判決日付】 昭和37年8月10日
【判示事項】 他人の権利の処分と追認
【判決要旨】 甲が、乙の権利を自己の権利であるとして処分した場合に、乙がこれを追認したときは、右処分は、民法第116条の類推適用により、処分のときに遡つて、乙についてその効力を生ずると解すべきである。

判旨
 或る物件につき、なんら権利を有しない者が、これを自己の権利に属するものとして処分した場合において真実の権利者が後日これを追認したときは、無権代理行為の追認に関する民法一一六条の類推適用により、処分の時に遡つて効力を生ずるものと解するのを相当とする(大審院昭和一〇年(オ)第六三七号同年九月一〇日云渡判決、民集一四巻一七一七頁参照)。