故意の条件成就 最判平成6年5月31日

条件
法律行為の効力の発生又は消滅を将来の不確実な事実の成否にかからしめる法律行為の附款

127条
? 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う、
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

128条
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することはできない。

129条
条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保に供することができる

130条
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる

131条
既成条件

132条
不法条件

133条
不能条件

134zょう
随意条件

条件付法津行為において、当然条件の成就によって利益を受ける当事者が、不当に(故意に)条件を成就させた場合、それによって損害を被った相手方は、そのような条件成就行為が債務不履行不法行為に該当する場合には、行為者に対し損害賠償を請求できる。

そこで、その条件を成就していないものとすることができるか。民法は、条件成就による不利益を受ける当事者が故意に条件成就を妨害したとき、相手方はその条件を成就したものとみなすことができる(130条)、逆の規定はないので問題となる。

130条の趣旨は、?不正な行為をした者への制裁、?相手方の保護(条件は成否が不確実なため損害賠償にあたっては損害の発生および額の証明が困難であるため相手方の保護に十分でないこと)、?当事者の意思尊重(当事者は条件の成就を望むのが通常で、条件成就擬制は当事者の意思にかなう)

130条の類推適用によって対応した。

【判決日付】 平成6年5月31日
【判示事項】 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときと民法一三〇条の類推適用
【判決要旨】 条件の成就によって利益を受ける当事者が故意に条件を成就させたときは、民法一三〇条の類推適用により、相手方は条件が成就していないものとみなすことができる。

判旨
三 右事実によれば、被上告人関西がAに櫛歯ピン付き部分かつらを販売した行為が本件和解条項第一項に違反する行為に当たるものであることは否定できないけれども、上告人は、単に本件和解条項違反行為の有無を調査ないし確認する範囲を超えて、Aを介して積極的に被上告人関西を本件和解条項第一項に違反する行為をするよう誘引したものであって、これは、条件の成就によって利益を受ける当事者である上告人が故意に条件を成就させたものというべきであるから、民法一三〇条の類推適用により、被上告人らは、本件和解条項第二項の条件が成就していないものとみなすことができると解するのが相当である。これと同旨をいう原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。