最判平成24年2月3日 土地汚染対策法3条2項に基づく有害物品使用特定施設使用廃止通知の処分性

事件番号
 平成23(行ヒ)18
事件名
 土壌汚染対策法による土壌汚染状況調査報告義務付け処分取消請求事件
裁判年月日
平成24年02月03日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
民集 第66巻2号148頁
原審裁判所名
札幌高等裁判所
原審事件番号
 平成21(行コ)14
原審裁判年月日
 平成22年10月12日
判示事項
 土壌汚染対策法3条2項による通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか
裁判要旨
 土壌汚染対策法3条2項による通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
参照法条
 土壌汚染対策法3条1項,土壌汚染対策法3条2項,土壌汚染対策法3条3項,土壌汚染対策法施行規則(平成22年環境省令第1号による改正前のもの)1条2項2号,土壌汚染対策法施行規則(平成22年環境省令第1号による改正前のもの)13条,行政事件訴訟法3条1項,行政事件訴訟法3条2項


■ 判旨

主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人古田渉ほかの上告受理申立て理由について


1 本件は,土壌汚染対策法(以下「法」という。)3条1項所定の有害物質使用特定施設に係る事業場の敷地であった土地の所有者である被上告人が,当該施設の使用の廃止に伴い,法に規定する都道府県知事の権限に属する事務を行う旭川市長から同条2項による通知を受け,上記土地の土壌汚染状況調査を実施してその結果を報告すべきものとされたことから,上記通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提にその取消しを求めている事案である。論旨は,同条2項による通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした原審の判断に法令の解釈の誤りがあるというのである。


都道府県知事は,有害物質使用特定施設の使用が廃止されたことを知った場合において,当該施設を設置していた者以外に当該施設に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者,管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)があるときは,当該施設の使用が廃止された際の当該土地の所有者等(土壌汚染対策法施行規則(平成22年環境省令第1号による改正前のもの)13条括弧書き所定の場合はその譲受人等。以下同じ。)に対し,当該施設の使用が廃止された旨その他の事項を通知する(法3条2項,同施行規則13条,14条)。その通知を受けた当該土地の所有者等は,法3条1項ただし書所定の都道府県知事の確認を受けたときを除き,当該通知を受けた日から起算して原則として120日以内に,当該土地の土壌の法2条1項所定の特定有害物質による汚染の状況について,環境大臣が指定する者に所定の方法により調査させて,都道府県知事に所定の様式による報告書を提出してその結果を報告しなければならない(法3条1項,同施行規則1条2項2号,3項,2条)。これらの法令の規定によれば,法3条2項による通知は,通知を受けた当該土地の所有者等に上記の調査及び報告の義務を生じさせ,その法的地位に直接的な影響を及ぼすものというべきである。


都道府県知事は,法3条2項による通知を受けた当該土地の所有者等が上記の報告をしないときは,その者に対しその報告を行うべきことを命ずることができ(同条3項),その命令に違反した者については罰則が定められているが(平成21年法律第23号による改正前の法38条),その報告の義務自体は上記通知によって既に発生しているものであって,その通知を受けた当該土地の所有者等は,これに従わずに上記の報告をしない場合でも,速やかに法3条3項による命令が発せられるわけではないので,早期にその命令を対象とする取消訴訟を提起することができるものではない。そうすると,実効的な権利救済を図るという観点から見ても,同条2項による通知がされた段階で,これを対象とする取消訴訟の提起が制限されるべき理由はない。


以上によれば,法3条2項による通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照)。

以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官
須藤正彦)