最判昭和57年1月21日 取締役解任の正当事由
最判昭和57年1月21日 取締役解任の正当事由
事件番号
昭和56(オ)974
事件名
株主総会決議取消等
裁判年月日
昭和57年01月21日
法廷名
最高裁判所第一小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
集民 第135号77頁
原審裁判所名
福岡高等裁判所
原審事件番号
昭和55(ネ)454
原審裁判年月日
昭和56年06月16日
判示事項
商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえないとされた事例
裁判要旨
株式会社の代表取締役であつた甲が持病の悪化により療養に専念するため、その有していた右一会社の株式を取締役乙に譲渡し、乙と代表取締役の地位を交替し、その後乙が、経営陣の一新を図るため臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、甲を取締役から解任したときは、右解任につき商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえない。
参照法条
商法257条1項但書
判旨
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人丸山隆寛の上告理由について
原審が適法に確定した事実は、(1) 被上告会社の代表取締役であつた上告人は昭和五二年九月ころ持病が悪化したので、被上告会社の業務から退き療養に専念するため、その有していた被上告会社の株式全部を被上告会社の取締役Dに譲渡し、Dと代表取締役の地位を交替した、(2) そしてDは、経営陣の一新を図るため、同年一〇月三一日開催の臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、原告を取締役から解任した、というのであり、右事実関係のもとにおいては、被上告会社による上告人の取締役の解任につき商法二五七条一項但書にいう正当な事由がないとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。
原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原判決を正解せず、又は独自の見解に基づいてこれを論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 中 村 治 朗
裁判官 団 藤 重 光
裁判官 藤 崎 萬 里
裁判官 本 山 亨
裁判官 谷 口 正 孝