平成24年 重要判例要旨(労働法・経済法)

労働法
最判平成24年2月21日
音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結して顧客宅等での出張修理業務に従事する受託者につき,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例

要旨
音響製品等の設置,修理等を業とする会社と業務委託契約を締結し,顧客宅等を訪問して行う出張修理業務に従事する受託者につき,次の(1)〜(5)など判示の事情の下において,独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無について十分に審理を尽くすことなく,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たらないとした原審の判断には,違法がある。
(1) 上記会社において,出張修理業務のうち多くの割合の業務は,上記会社自らの選抜を経て上記会社の実施する研修を了した上記受託者が担当しており,上記会社が上記受託者とその営業日及び業務量を調整した上で業務を割り振っている。
(2) 業務委託契約の内容は上記会社の作成した統一書式の契約書及び覚書によって画一的に定められており,業務の内容やその条件等について上記受託者の側で個別に交渉する余地はない。
(3) 上記受託者に支払われる委託料は,形式的には出来高払に類する方式で支払われているが,上記受託者は1日当たり通常5件ないし8件の出張修理業務を行い,その最終の顧客訪問時間は午後6時ないし7時頃になることが多く,委託料の額が修理する機器や修理内容に応じて著しく異なるといった事情も特段うかがわれない。
(4) 上記受託者は,特別な事情のない限り上記会社によって割り振られた出張修理業務を全て受注すべきものとされている上,業務委託契約の存続期間は1年間で,上記会社から申出があれば更新されないものとされている。
(5) 上記受託者は,原則として業務開始前に上記会社に出向いて上記会社の指定した顧客訪問予定日時等の告知を受け,上記会社の指定した業務担当地域に所在する顧客宅に順次赴き,上記会社の親会社の制服及び名札を着用し上記会社の名刺を携行して当該親会社が作成したマニュアルに従って所定の出張修理業務を行い,業務終了後も原則として上記会社に戻って伝票処理や修理進捗状況等の記録への入力作業を行っている。



経済法
最判平成24年2月20日
都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について複数のゼネコンがした受注予定者の決定等に関する合意が,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるとされた事例

要旨
市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者)がした,①上記法人から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者又は当該工事についての受注の希望を表明する者が1名のときはその者を受注予定者とし,複数のときはそれぞれの者の上記関連性等の事情を勘案してこれらの者の話合いにより受注予定者を決め,②受注すべき価格は受注予定者が決定し,それ以外の者は受注予定者がその価格で受注できるように協力する旨の合意は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たる。
(1) 上記法人は,入札参加資格を有する入札参加希望者の中から指名競争入札の参加者を指名していた上,規模の大きい工事や高度な施工技術が求められる工事については,同法人の付した格付順位の上位の事業者を優先して指名しており,上位に格付けされていた上記ゼネコン及び上記地域で事業活動を行う他のゼネコンを指名することが多かった。
(2) 上記合意をしたゼネコンは,上記合意に基づく個別の受注調整において,上記(1)の他のゼネコンからの協力が一般的に期待でき,入札に参加する地元業者の協力又は競争回避行動も相応に期待できる状況の下にあった。
(3) 実際に発注された上記土木工事のうち相当数の工事において上記合意に基づく個別の受注調整が現に行われ,そのほとんど全ての工事において受注予定者が落札し,その大部分における予定価格に対する落札価格の割合も極めて高いものであった。