最決平成19年10月10日 性同一性障害者につき性別の取扱いの変更について

【判示事項】 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号と憲法13条,14条1項
【判決要旨】 性同一性障害者の性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定は,憲法13条,14条1項に違反しない。


    主   文

 本件抗告を棄却する。
 抗告費用は抗告人の負担とする。

       理   由

 性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定は,現に子のある者について性別の取扱いの変更を認めた場合,家族秩序に混乱を生じさせ,子の福祉の観点からも問題を生じかねない等の配慮に基づくものとして,合理性を欠くものとはいえないから,国会の裁量権の範囲を逸脱するものということはできず,憲法13条,14条1項に違反するものとはいえない。このことは,当裁判所の判例最高裁昭和28年(オ)第389号同30年7月20日大法廷判決・民集9巻9号1122頁,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)の趣旨に徴して明らかである。論旨は理由がない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 田原睦夫 裁判官 藤田宙靖 堀籠幸男 那須弘平 近藤崇晴