一事不再理効と常習特殊窃盗事案  前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪である場合には,両者が実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成するとしても,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばないとして事例  最判平成15年10月7日

前訴及び後訴の各訴因が共に単純窃盗罪である場合には,両者が実体的には一つの常習特殊窃盗罪を構成するとしても,前訴の確定判決による一事不再理効は,後訴に及ばないとして事例  最判平成15年10月7日

★ 一事不再理効は、公訴事実の同一性・単一性の範囲に及ぶ。審判対象は、訴因であり、公訴事実の同一性の範囲で訴因変更(312条1項)が及ぶ範囲では、その範囲で有罪が及ぶ危険に被告に及んでいたといえ、一事不再理効を及ぼすことができる。
 では、常習特殊窃盗を構成する数個の窃盗行為が、前訴において単純窃盗との判決を受けていた場合に、後訴でも単純窃盗として基礎されたときに、一事不再理効は及ぶか。
 本判決はこの点について、
(1)公訴事実の単一性の判断について
「訴因制度を採用した現行刑訴法の下においては,少なくとも第一次的には訴因が審判の対象であると解されること,犯罪の証明なしとする無罪の確定判決も一事不再理効を有することに加え,前記のような常習特殊窃盗罪の性質や一罪を構成する行為の一部起訴も適法になし得ることなどにかんがみると,前訴の訴因と後訴の訴因との間の公訴事実の単一性についての判断は,基本的には,前訴及び後訴の各訴因のみを基準としてこれらを比較対照することにより行うのが相当である。」
とした上で、
(2)裁判所が常習特殊窃盗による一罪という観点を持ちこめるかについて
「前訴及び後訴の訴因が共に単純窃盗罪であって,両訴因を通じて常習性の発露という面は全く訴因として訴訟手続に上程されておらず,両訴因の相互関係を検討するに当たり,常習性の発露という要素を考慮すべき契機は存在しないのであるから,ここに常習特殊窃盗罪による一罪という観点を持ち込むことは,相当でないというべきである。」
と判断した。



■ 判旨