物権・対抗要件主義・対抗要件としての登記

物権法

*物権とは、特定の物を直接支配して利益を享受する排他的権利

*一物一権主義とは、1個の物の上には同じ内容の物権は1つしか存在しないこと
独立性・単一性
物の単位とは、取引観念から決定される

独立性の例外として、一筆の土地の一部の取得時効
単一性の例外として、集合動産担保

*物権法定主義
物権は、法律に定めたもの以外は当事者が合意で総説することはできない。
物権は絶対的・排他的権利であるため、その種類を限定し、画一的にすることで第三者が不測の不利益を被るおそれがあるためである

物権法定主義の例外として、物権法定主義を害しない慣習上の物権も認められる。
たとえば、譲渡担保権

*物権変動とは、物権の発生・変更・消滅
消滅には、目的物の目室、放棄、消滅時効、契約の取消し・解除・混同(179条)
混同の例外・例外の例外に注意

*契約による物権変動
意思主義(176条)

物権行為の独自性は、意思主義をとる日本の民法では、特別の法律行為を要するのは迂遠であるので、否定される。

物権変動の時期は、意思主義の観点から、契約時に移転することが文言上素直で、明確性を有する。

*公示の原則とは、物権変動を第三者に主張するには外部から認識できる一定の徴表的な形式が伴わなければならないとする原則。これは公示がない限りは、物権変動がないであろう信頼が生まれるので、消極的な信頼保護をもたらす。

*公信の原則とは、真の権利状態と異なる公示が存在する場合に、公示を信頼して取引をした者に対して、公示どおりの権利状態があったのと同様の保護を与える原則。積極的信頼の保護を与え、192条即時取得等で認められる。

*登記請求権
法的性質として、多元的に
①物権的登記請求権
②物権変動的登記請求権
③債権的登記請求権 と説明される。

*仮登記には、十位保全郄があるが、対抗力はあくまで本登記の時である。

対抗要件主義「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」
*二重譲渡の理解
 不完全物権変動説として、登記がなくても当事者・第三者間で物権変動が生ずるが対抗要件主義をとっているために、不完全なものであると解し、登記を備えることによって完全な物権変動となると解する。

*177条の第三者
177条 物権の得喪・変更は無制限に解し、
三者とは、制限的に解して
「当事者もしくはその包括承継人以外の者で不動産に関する物権の得喪・変更の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者」をいう。

三者ではないものには、①不動産登記法5条列挙者・②無権利者・③不法行為者・④前主・後主の関係・⑤背信的悪意者が含まれる。

背信的悪意者排除論
 第三者を害する目的を有するような自由競争原理を逸脱し、信義則上第三者にあたらない者は保護に値しないので、当該権利関係にあたっては、主張を許さない。

*権利保護資格要件としての登記とは、これを具備しないを保護されない(権利変動時に必要なもの)

① 取消しと登記
② 解除と登記
*解除前の第三者が545条1項但書で保護されるためには、帰責性のない解除権者の犠牲のもとに保護される以上は、権利保護資格要件としての登記を求めるべきである(判例は、対抗要件としての登記)

*解除後の第三者には、直接効果説をとり、解除の遡求効も法的擬制であるので、復帰的物権変動を観念でき、解除権者と第三者は対抗関係にあると解すべきである。そこで、対抗要件としての登記が必要となる

③ 取得時効と登記
(1)時効取得した者と元所有者は物権変動の当事者類似の関係にあるので、登記なくして取得時効を主張できる
(2)時効完成前に元所有者から不動産を譲り受けた者は時効取得者とは当事者類似の関係になるので、時効取得者は登記なくして時効取得を主張できる
(3)時効完成後に元所有者から不動産を譲り受けた者は時効取得者とは対抗関係と同視できるので、登記なくして時効取得を主張できない
(4)時効の起算点は動かすことはできない
(5)さらなる時効取得も可能である

長期間占有した者が保護されないとの問題がありうる。

④ 相続と登記
共同相続と登記について、共同相続人の1人が単独登記して第三者に譲渡した場合でも、他の共同相続人は、譲渡した共同相続人は他の共同相続人の持分については無権理社なので、登記なくして持分を主張できる。

⑤ 遺産分割と登記
 遺産分割後の差押債権者に対しては、遺産分割のより持分の取得をしていても、遺産分割は新たな物権変動といえ、二重に譲渡されている場合と同様に、対抗問題と解すべきである。
したがって、対抗要件としての登記がなければ持分の取得を主張できない。

⑥ 相続放棄と登記
 相続放棄は、債務超過の相続財産の負担から相続人を解放する制度で遡求効(939条)を貫くべきなので、登記なくして対抗することができる

⑦ 遺贈・死因贈与として被相続人から特定不動産の贈与を受けたときは、物権変動にあたるので登記なくして対抗することはできない

⑧ 包括遺贈と登記として、相続財産の全部を遺贈する包括遺贈により相続財産の取得をしたことは、受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになる(990条・896条)ので、登記なくして対抗することができる

⑨ 「相続させる」旨の文言により遺産分割方法が指定され、他の共同相続人はこれと異なる遺産分割の教義、審判ができず、何らの行為も要せずして被相続人の死亡時に直ちに当該遺産が当該相続人に承継されるので、物権変動を対抗するための登記は不要であると解される。

*動産物権変動における対抗要件
① 現実の引渡し ② 簡易の引渡し ③指図による占有移転 ④占有改定